福祉ネイリストとしての再出発
ネイリスト・亀川さんインタビュー
ネイルの仕事といえば、サロンで働くキラキラしたイメージが強いかもしれません。ですが、実際にはいろいろな働き方があり、なかでも「福祉ネイリスト」という分野に注目が集まっています。今回は、福岡で福祉ネイリストとして働く亀川さんにお話を伺いました。
ネイリストとしての経験はまだ浅い亀川さんですが、現在は高齢者施設などを訪問する形でネイルの施術を行っています。この日も、NHKのテレビ取材が入るということで、少し緊張しながらも笑顔で現場に向かっていました。
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ネイルの夢を一度あきらめて、再スタート
――ネイリストを目指したきっかけを教えてください。
亀川さん:「昔から細かい作業が好きで、高校を卒業してすぐネイルの学校に通いました。当時はサロンに就職してネイリストとして働くのが夢でした。でも、その途中で結婚と妊娠が重なって、一度はネイルの道をあきらめました。」
その後、子育てが少し落ち着いたタイミングで、「もう一度ネイルに関わりたい」という気持ちが強くなったという亀川さん。ただ、長時間立ち仕事のサロン勤務には不安があったため、自分のペースで働ける「福祉ネイリスト」という選択肢を選びました。
参考記事:福祉ネイリストという仕事|福岡の介護施設で笑顔を届ける現場レポート
福祉の現場で見つけた、ネイルの新しい意味
――福祉ネイリストとして働くなかで、どんなやりがいを感じていますか?
亀川さん:「おばあちゃんたちがすごく喜んでくれるんです。自分の爪を見て『きれいね』『若返った気がする』って言ってくれて、毎回こちらまで元気をもらっています。爪先って、年齢に関係なく気持ちを明るくしてくれるんですね。」
ネイルの技術だけではなく、人と接する優しさや気配りも大切にされる福祉の現場。サロンワークとはまた違った達成感があり、「ここからまた始めてよかった」と語ってくれました。

福岡で福祉ネイリストという働き方を選ぶ理由
現在、福岡でも福祉ネイリストという働き方を選ぶ人が少しずつ増えています。ネイリストとしてブランクがある人、転職を考えている人、子育て中で短時間しか働けない人にもぴったりの選択肢です。
――今、ネイル業界で働きたいと考えている人にメッセージをお願いします。
亀川さん:「私も一度あきらめたけど、今こうしてまたネイリストとして働けています。福祉ネイルには、たくさんの人を笑顔にできる力があります。経験が浅くても、年齢が高くても、やってみたい気持ちがあるなら、まず一歩踏み出してみてほしいです。」
福祉ネイリストの一日をのぞいてみる
亀川さんの一日は、一般的なサロン勤務のネイリストとは少し違います。訪問先は主に福岡市内のデイサービス施設や高齢者住宅。事前に施術の希望者がリストアップされており、その方々の元をひとりずつ丁寧にまわっていきます。
朝は準備からスタート。道具の消毒、ジェルやファイルの確認をしてから現場に向かいます。
「施設に到着すると、まずはスタッフの方にごあいさつして、スペースをお借りします。今日は何人いらっしゃるのか、健康状態はどうかなども確認しておくんです。」
施術は一人あたり20分〜30分ほど。爪の長さを整えたり、簡単なカラーリングを行ったりしながら、会話も大切にします。
「手を握って『ありがとうね』『嬉しいわ』と声をかけてもらえる瞬間が、毎回心に残ります。特に、普段はあまり表情のなかった方がネイルを通じて笑ってくれると、本当にやってよかったと感じます。」

サロンとは異なる、福祉の現場で必要なこと
――福祉ネイリストとして働く中で、どんな力が求められると感じていますか?
亀川さん:「まず一番大事なのは、思いやりと気づかいですね。高齢者の方の爪は薄かったり、巻いていたりすることも多いので、少しの違和感にもすぐ気づけるように注意しています。技術ももちろんですが、それ以上に相手のペースに合わせる力が求められます。」
また、施術中の会話も仕事の一部。身体のケアだけでなく、心のケアにつながることも多いため、安心感を与えられる人柄も大切にされる要素のひとつです。
経験が浅くても始められる?働き方の選択肢として
ネイルの経験が少ない、ブランクがある、子育て中でフルタイムは難しい。そんな方にとっても、福祉ネイリストは「無理なく働ける仕事」として注目されています。
亀川さん自身も、復帰の第一歩が福祉ネイルでした。
「私はネイリストとしてブランクがありましたが、福祉ネイルの現場では完璧なアートよりも丁寧なケアが求められるんです。だから、基礎がしっかりしていれば、すぐに現場に立つことができます。」
福岡エリアでも、このような柔軟な働き方を望むネイリストの方に向けた求人や転職のチャンスが増えつつあります。

福祉ネイリストになるために、まず必要なこと
福祉ネイリストとして働くためには、特別な国家資格は必須ではありませんが、基本的なネイル技術と衛生管理の知識は欠かせません。まずはネイルケアやカラーリングの基礎をしっかり身につけることが第一歩です。
「私はネイルスクールで基礎を学んだあと、一度離れてしまったので、改めて実技を思い出すところから始めました。でも、実際の現場では、難しいアートよりもケアが丁寧であることが大事。特別な資格よりも、目の前の人に寄り添う気持ちが評価される仕事だと感じています。」
また、福祉ネイルには高齢者や障がいのある方の身体に配慮する必要があるため、福祉施設での研修や、現場での経験を積むこともおすすめです。
福岡で福祉ネイリストとして働くには
福岡エリアでは、訪問ネイルや施設ネイルの需要が年々増加しています。とくに高齢化が進む地域では、福祉と美容をかけ合わせたサービスが注目されており、求人も増えてきています。
求人を探すときは、「福祉ネイリスト」「訪問ネイル」「ネイル 求人 福岡」などのキーワードで検索すると、希望に合った働き方が見つかる可能性があります。また、一般的な求人サイトに載っていないこともあるため、美容系専門の求人サイトやサロンの公式サイトをこまめにチェックするのもポイントです。
福祉施設と提携しているネイルサロンや、訪問ネイルを専門にしている事業者も増えてきており、サロン勤務と並行して福祉ネイルに携わる人もいます。
働き方の選択肢が広がる時代に
「サロンで毎日働くのは難しい」「家庭や自分の時間も大事にしたい」そんな想いを持つ方が、無理なく続けられるのが福祉ネイリストの魅力です。
亀川さんも、現在は週に数日、施設への訪問ネイルを中心に活動しながら、自分のペースで生活とのバランスを取っています。
「たとえフルタイムじゃなくても、自分にできる範囲で誰かの役に立つ仕事ってあるんだなって実感しています。」

爪を彩るだけじゃない、心を動かす仕事
――福祉ネイリストの仕事を通じて、印象に残っている出来事はありますか?
亀川さん:「ある日、いつもはあまりお話しされない利用者さんに施術をしたんです。そしたら、カラーを塗り終えた瞬間にありがとうって笑ってくれて。その笑顔がすごくやわらかくて、スタッフさんも驚いていました。爪先を通して、気持ちが少し開いたような感じがして…。あの時は私も胸がいっぱいになりました。」
ネイルは、たった数十分の施術でも、その人の一日を変えてしまうほどの力を持っています。とくに、普段は人と触れ合う機会が少ない高齢の方にとって、爪を整えてもらう時間は、自分を大切にされていると実感できる貴重なひとときです。
「色を選ぶ時も、皆さんすごく楽しそうなんですよ。今日は赤にしてみようかなって、迷いながらもすごく嬉しそう。自分の爪に意識が向くだけで、表情が変わるんです。」
特別なことをしなくても、人を元気にできる
――福祉ネイルを始めた頃、不安はありませんでしたか?
亀川さん:「ありました。最初は、私なんかで大丈夫かなって。でも、利用者さんにとっては、完璧な技術よりも、丁寧に関わってくれることのほうが大切なんですよね。ネイルを通じてその人と関わろうとする気持ちさえあれば、ちゃんと届くと今は思えます。」
この言葉には、福祉ネイリストとしての本質が詰まっています。華やかなデザインを競うのではなく、一人ひとりの生活に寄り添う。その姿勢こそが、多くの方に求められているのです。
これから福祉ネイルを目指す方へ
――最後に、これから福祉ネイリストを目指す人たちに伝えたいことはありますか?
亀川さん:「ネイリストって、どうしてもサロンで働くイメージが強いけど、それだけが道じゃないんです。私のように途中で一度あきらめた人や、家庭との両立を考えている人にとっても、福祉ネイルはぴったりの働き方です。特別な経験がなくても、人と関わるのが好きで、ネイルが好きなら、きっと大丈夫です。」
福岡で福祉ネイリストとして働きたいと考える方へ、求人や働き方についての情報も少しずつ整ってきています。迷っている方は、まずは現場をのぞいてみる、スクールやサロンに相談してみる、そんな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
亀川有美香さんのご紹介
福岡で福祉ネイリストとして活動中の亀川有美香さんは、専門学校ヒューマンアカデミー・ネイルカレッジ(全日制)でネイルを学び、在学中からネイリストを目指して努力を重ねていました。しかし、卒業後すぐに結婚・妊娠・出産とライフステージの変化が続き、一度はネイリストの夢を諦めることに。
それでも、「いつかまたネイルの仕事をしたい」という気持ちを持ち続け、数年のブランクを経て、福祉ネイルという新しい形で現場に復帰。再出発のきっかけとなったのは、学生時代に出会った恩師であり、現在この記事を執筆しているYUNO先生との再会でした。
現在は、福岡アンドネイルスタッフ。訪問ネイルを中心に、利用者さん一人ひとりに丁寧に向き合う姿勢で、福祉ネイリストとして活躍中です。
→ 亀川有美香さん Instagram
「サンカルナ」のご紹介。西日本鉄道(西鉄)が運営する有料老人ホーム

(高齢者向け住宅)ブランドです。福岡を中心に展開されており、比較的ハイクラスな高齢者住宅として知られています。
■ サンカルナシリーズとは
西鉄グループ(西日本鉄道株式会社)が手がける高齢者向け住宅ブランドで、福岡県内を中心に複数の施設を展開しています。
■ 特徴・魅力
1. 上質で安心できる住環境
都市型の好立地(駅近や自然が近い場所)にあり、広々とした居室や快適な共用スペースが整っています。自立した生活ができる方から、介護が必要な方まで対応可能な施設もあります。
2. 西鉄グループならではの信頼感
交通インフラや不動産開発で培った実績があり、運営・サポート体制が安定している点が大きな魅力です。
3. 医療・介護との連携
施設によっては、看護師常駐や医療機関との連携があり、健康面のサポートも充実。介護が必要になった場合にも住み続けられる「介護型」の施設も展開しています。
4. 文化的・社交的な生活
レクリエーションやイベント、サークル活動などが活発で、「第二の人生を豊かに過ごす」ことを重視した環境設計になっています。
■ 入居対象と費用感
- 入居対象:主に60歳以上の自立・要支援・要介護の方
- 費用:立地や施設のグレードによりますが、**入居一時金は数百万円〜数千万円台、月額費用は20万円前後〜**が多い印象です
■ 福祉ネイリストとの関連性
サンカルナのような質の高い有料老人ホームでは、入居者のQOL(生活の質)向上の一環として、ネイルケアや美容サービスの需要も高まりつつあります。
福祉ネイリストが訪問して施術を行うことで、入居者の心身に良い変化をもたらし、施設全体の満足度向上にもつながります。