働いているネイリストは何も幸せにならない。
P1:経営者も見たことのないスタッフが居るサロン。ネイリストが本当に大切にされる職場とは
「経営者、見たことない。知らない」そんなサロンに、安心して働ける環境はあるのでしょうか?採用や面接で語られる理想と、現場の実情とのズレ。福岡のネイリストたちの経験から、信頼できるサロンの見分け方を掘り下げます。
P2:大きな店舗、きれいな内装。それって誰のため?
新しい店舗を構えたいという気持ちは、経営者にとって大きな夢かもしれません。広い空間にシャンデリア、流行の内装、駅近の一等地。確かに、見た目の華やかさは集客の武器になりますし、オーナーとしての達成感もあるでしょう。
でも、その理想の店舗が、果たしてネイリストにとっても理想かというと、答えは違ってきます。
リニューアルして、スタッフみんなで楽しみにしていたはずが、オープンしてみると、業務量は倍増、勤務時間も長くなり、休憩すらまともに取れない日が続きました。なぜかというと「店舗維持のコスト」が重たすぎたからです。
ネイリストの採用や教育、施術のクオリティ管理よりも、まずは家賃やローンの支払いが優先されてしまう。だからこそ、売上を上げるためにスタッフに無理をさせるサロンも少なくありません。シフトが急に増えたり、月給や歩合が下がったり、気がつけば離職者も増えていきました。
「こんなに頑張ってるのに、なんで毎月不安ばかりなんだろう?」そう思って辞めたネイリストが、私のまわりにも何人もいます。
ネイル業界は今、派遣や業務委託、正社員・アルバイトといった雇用形態が多様化していますが、どんな働き方であれ、ネイリスト自身が安心して働ける環境がなければ、どの形も結局は長続きしません。
華やかなサロンを作ることが悪いわけではありません。でもその前に、働くネイリストの声に耳を傾けているか、今いるスタッフにちゃんと目が向いているか。そこを見つめ直すことこそ、経営者に求められていることだと思うのです。
P3:お店の形に経営者の気持ちが見えてくる
「この店は、みんなが働きやすいように考えたつもり」
「広くてキレイな空間にすれば、お客様もスタッフも喜ぶでしょ?」
そんなふうに語る経営者の言葉を、これまで何度も聞いてきました。
でも、実際の現場ではどうだったかというと、「オープン前の掃除はスタッフ総出」「シフト調整はギリギリ」「採用が間に合わず、ひとり当たりの施術数が激増」――こんな状態が続くのです。
働く私たちから見ると、どうしても「結局、自分がやりたかったことに周りを巻き込んでるだけ」という印象がぬぐえませんでした。
大きな内装費をかけた分、月給は据え置き。時給制のスタッフは、施術に追われて残業が増えても手当がつかないこともありました。
「お客様のため」と言われながら、実際はスタッフの体力や生活が削られていく。そんな矛盾に、ふとした瞬間に気づいてしまうのです。
また、「このサロンで成長してほしい」とか「自分でお店を持つ夢も応援したい」といった前向きな言葉が、だんだんと現実からかけ離れていく。
それでもスタッフは頑張ってしまう。なぜなら、面接時には夢を語り合い、希望を持たせてもらったからです。
求人票には「福利厚生が充実」「働きやすさを大切に」と書かれていたのに、いざ働き始めると、誰よりも経営者の都合が優先される。
派遣もアルバイトも業務委託も、それぞれの立場で不満を抱えながら、それを口に出せないまま離れていく。そんな職場、実は少なくありません。
店舗の広さや立地、サービスメニューの構成から、どこかに「この形を実現したかったんだろうな」という経営者の欲がにじみ出ることがあります。
もちろん、理想を形にするのは素敵なこと。けれど、それが「誰のための理想か」によって、スタッフの感じ方は大きく変わるのです。
P4:ペットを可愛がるのは大好き。でも世話は人任せ。良い人気取り
「みんながイキイキ働けるサロンにしたい」「ネイリストの幸せを大事にしたい」
良い人気取りに騙されないで。そう言ってくれる経営者の言葉に、最初は心が動かされます。面接のときにも、熱心にスタッフ想いを語る姿に安心したり、未来を描けたりすることもあります。
けれど、いざ働き出してみると、話が違うと感じる場面に出会うことが多いのです。
たとえば、人が足りない日でも営業時間はそのまま、休憩もままならず連続施術が続く。
時給制なのに、準備や後片づけは「勤務時間外」。
月給制のスタッフは、毎月の売上プレッシャーでメンタルをすり減らしていく。
それでも経営者は、「スタッフが宝だから」と言いながら、実際には現場を深く見ようとしない。どこか他人事のように感じることがあります。
そんなとき、ふと頭に浮かんだのが、
「ペットを可愛がるのは大好き。でも毎日の世話やしつけ、病院への通院は全部他人任せ」
そういう人の姿と、少し似ているということです。
愛情があるつもりでも、実際に手をかけたり向き合ったりしないなら、それは本当の意味で「大切にしている」とは言えないのではないでしょうか。
サロンも同じです。
どれだけ理想を語っていても、現場を知らずに無理な運営を続けていれば、スタッフは疲れ果てて去っていく。
「ここでずっと働きたい」と思えるサロンには、言葉ではなく、行動で示してくれる経営者がいるのです。
働き方や待遇、福利厚生、勤務時間のバランス。どれもスタッフ目線で設計されてこそ、本当に可愛がっていることになるのだと思います。
P5:現場を見ている経営者かどうかは、すぐにわかる
ネイリストとして何年か働いていると、面接の段階や入社して間もない頃から「この人は現場をわかっているな」と感じる経営者と、「現場を見ようとしていないな」と感じる経営者の違いが、自然と見えてきます。
まず、現場を見ている経営者は、スタッフの様子をよく観察しています。たとえば、繁忙期に無理が出ていないか、シフトに偏りはないか、施術後に疲れていそうなスタッフがいれば、声をかけてくれる。それだけで、こちらの気持ちはだいぶ違ってきます。
一方で、現場を見ていない経営者は、数字ばかりを気にします。売上や予約数が伸びていることに満足して、ネイリスト一人ひとりの状態には無関心。急な人手不足も「なんとか回して」と言うだけで、自分から現場に足を運ぶことはほとんどありません。
かつて私がいたあるサロンでは、店内でスタッフ同士の連携が崩れ始めていたのに、経営者はそれに気づいていませんでした。
それどころか、スタッフの退職理由を「技術不足」「やる気の問題」と片付けていたのです。
でも実際は、勤務時間の不公平さや、一部のスタッフにだけ負担が偏る状況が続いていたことが原因でした。こうした不満が積もっていく中で、改善されないまま数人が立て続けに辞めていきました。
現場を知っている経営者は、「技術を教える場」や「給与を払うだけの職場」ではなく、「人が安心して働き、長く続けられる場所」を目指します。
だからこそ、募集要項や求人票に書かれている福利厚生や勤務条件が、表面的ではなく、実際に現場に反映されているのです。
正社員でもアルバイトでも、業務委託でも、「見られている」「気にかけてもらっている」と感じる職場と、そうでない職場では、働く気持ちに大きな差が出てきます。
どんなに小さなことでも、現場に目を向ける姿勢があるかどうか。それが、信頼できる経営者かどうかを見極める大きなポイントになるのだと思います。
P6:安心して働ける場所を選ぶネイリストが増えている
以前は、「大手サロンだから安心」「店舗数が多いほうが信用できる」と思われがちでした。けれど最近は、ネイリストたちの価値観も少しずつ変わってきています。
知名度や規模よりも、自分がストレスなく続けられること。誰かの犠牲の上に成り立つような働き方ではなく、ちゃんと人間らしく働けるかどうか。そういった中身を重視して、サロンを選ぶ人が増えています。
特に女性の場合、生活の変化が多い中で、勤務時間や福利厚生の柔軟さはとても大事なポイントになります。
妊娠や育児、家族の介護など、ライフスタイルの変化に対応してくれるサロンは、ネイリストにとって心強い存在です。
私の知人にも、大型店から小規模サロンへ転職したネイリストがいました。
以前は指名を取るために常に競争があり、シフトも不規則で、給与も歩合中心。売上が落ちればすぐに月給も下がる仕組みでした。
でも転職後は、「ここなら長く働けそう」と口にしていました。理由は、サロンの規模ではなく、職場の空気が穏やかで、ネイリスト一人ひとりの状況に目を向けてくれる環境だったからです。
特別な高待遇ではなかったけれど、時給や月給が安定していて、勤務時間も無理がなく、相談すればスケジュール調整にも柔軟に応じてもらえる。
そんな職場であれば、働く側も誠実に向き合いたくなるものです。
また、採用の段階で「今の技術でも大丈夫ですか?」「面接で言いにくいことも聞いてくれました」と話す子も増えてきました。
きれいな求人広告よりも、実際の働き方や人間関係がどうかに注目して、応募を決める傾向が強まっています。
大きなサロンよりも、小さくても安心して働ける場所。
表向きの条件よりも、「ここでなら頑張れる」と感じられる空気感。
今のネイリストたちは、そうした本音の居場所を求めて動いているように思います。

P7:サロンづくりは、経営者の理想を押しつけるものではなく、一緒につくっていくもの
サロン経営というと、どうしても「成功しているサロンの真似をすればいい」「ブランディングが大事」といった言葉が先に立ちます。もちろん、方向性を示すことや、経営者としてのビジョンを持つことは大切です。
けれど、どんなに素晴らしい理想も、それを一緒に実現するスタッフの存在があってこそ、現実のものになります。
一方的に理想を語るだけで、現場の声を聞かず、働く人の事情に目を向けなければ、どんなに内装がきれいでも、どれだけ技術が高くても、長く続くサロンにはなりません。
経営者が「こうしたい」と思う方向性を持っていても、それをスタッフと共有しながら、少しずつ形にしていく。
ときには修正したり、遠回りになったりしても、そこに「一緒につくっている感覚」がある職場こそ、居心地のいい場所になっていくのだと思います。
福岡でも、少人数制で無理なく働けるネイルサロンを選ぶネイリストが増えています。
時給や月給の安定性、福利厚生の中身、勤務時間の融通など、自分の暮らしやすさと両立できる職場を求める声は、決して特別なものではありません。
採用や面接の場でも、経営者の熱意よりも、実際にどんな人が働いていて、どんな空気が流れているかを見ている応募者は多いです。
そのとき、サロンの形だけではなく、あり方に目を向けてもらえるような、日々の姿勢こそが問われていると感じます。
サロンづくりは、経営者だけのものではありません。
ネイリストが働くことで、その空間に意味が生まれ、お客様にとっての価値が積み重なっていく。
その大切さを忘れずにいられる経営者でありたいと、私自身も改めて思っています。

