P1:ネイリスト協会の教育に足りないものとは?
ネイル業界では、「技術力」が最も重視される傾向があります。資格取得のために時間をかけて練習し、検定の合格を目指す。この流れは、ネイリストを目指す人なら誰しもが経験する通過点でしょう。
しかし、実際に現場に出てみると、技術だけでは通用しない現実に直面することも少なくありません。
「接客中の会話がうまくいかない」
「お客様の気分を損ねてしまった」
「チーム内でトラブルが起きやすい」
こうした悩みを抱える若手ネイリストは少なくないのです。
それはなぜか。多くの場合、「人間性」や「社会人としての基本マナー」がきちんと育っていないことが原因です。
現在のネイル教育、特にネイリスト協会主導の教育は、どうしても「検定合格」や「技術力の証明」に重点が置かれがちです。その結果として、社会性や協調性、相手を思いやる気持ちといった「人としての土台」が育たないまま現場に送り出されてしまっているのではないでしょうか。
ネイリストとして長く活躍するためには、「技術」だけでなく「人間力」も同じくらい大切です。にもかかわらず、その部分の教育が十分でないまま、“やりたい放題”な態度がトラブルを招くケースも見られます。
「なぜ協会の教育では、人間性についてもっと指導しないの?」
そんな疑問を感じているサロンオーナーや現役ネイリストは、決して少なくありません。
P2:なぜ「人間教育」がネイリストにとって必要なのか?
ネイリストの仕事は、「技術職」であると同時に「接客業」でもあります。
お客様の肌や爪に直接触れ、施術中は1時間以上、1対1で向き合う。この特殊な関係性の中で信頼を築くには、技術だけでは決して不十分です。
例えば、いくらアートが美しくても、言葉遣いや態度に違和感があると、お客様はリピートしてくれません。
逆に、技術がまだ未熟でも「感じがいい子」「丁寧で誠実」と思ってもらえれば、応援する気持ちで何度も足を運んでくれることもあります。
つまり、ネイリストにとって「人柄」や「コミュニケーション力」は、キャリアを左右するほど重要なスキルです。
それなのに、検定試験ではその部分はまったく評価されず、スクールや協会のカリキュラムでも深く触れられていないのが現状です。
さらに、人間関係や職場の空気感に悩んで辞めてしまう新人ネイリストも少なくありません。これは、単に根性が足りないわけではなく、「社会人としてのふるまい方」や「チームで働く意識」が十分に育たないまま、いきなりサロンという“実戦”に投入されるからです。
現場では、挨拶の仕方、報告・連絡・相談のタイミング、クレーム対応、上司や同僚との距離感の取り方…こうした“人としての基礎”が求められます。それらを身につけていなければ、たとえどれだけ技術が優れていても、長く続けることは難しくなってしまいます。
だからこそ今、ネイル教育のあり方を見直す必要があります。
「資格を取ること」だけではない、「人として育つこと」も、同じくらい大切なテーマとして扱われるべき時期に来ているのです。
P3:技術はあるのに、なぜ人が辞めていくのか?現場で起きている“見えない問題”
現場で働くネイリストたちの間では、こんな声が聞かれます。
「技術に関しては自信がついてきたのに、職場の人間関係がつらくて辞めたくなる」
「新人の時、ちょっとしたミスで“向いてないんじゃない?”と上から目線で言われ、何日も落ち込んだ」
「協会の資格を持ってる人が、まるで“上級階級”みたいに偉そうにしてくる」
こうしたストレスの原因の一つに挙げられるのが、「ネイリスト協会の認定講師制度」にまつわる現場での“空気”です。
本来、この制度は技術力や指導力を証明するためのポジティブな仕組みであるべきです。
しかし現実には、一部の人が「肩書」や「立場」を盾にして、他のネイリストを下に見るような態度をとってしまうことで、“人としての身分制度”のようなものができあがってしまっている場面も見られます。
実際にこんな例も…
- 「あの人は認定講師だから」と逆らえない空気ができ、サロン内の雰囲気が硬直化
- 技術的なアドバイスが、時に人格否定のような“叱責”にすり替わってしまう
- 講師を目指していないネイリストが「意識が低い」と陰で言われる
ネイル業界にとって、技術を高める制度が悪いわけではありません。
問題は、それが「人としての在り方」や「チームワークの破壊」に繋がってしまっていることにあります。
「認定講師=偉い人」「講師じゃない=下の立場」といった暗黙のヒエラルキーが出来上がってしまえば、現場の空気は当然ギスギスしていきます。
その結果、若手ネイリストが居心地の悪さを感じて離職し、せっかくの技術が業界に残らないという悪循環が生まれているのです。
P4:今こそ、技術だけでなく「人として育つ」ネイル教育を。
ネイル業界が本当に持続可能な業界であるためには、「技術教育」だけではなく、「人間教育」が不可欠です。
検定に合格することはもちろん大切ですが、それ以上に、お客様や仲間に信頼される人間性こそが、ネイリストとして長く働くための土台になります。
協会やスクールには、今後次のような視点の導入が求められるのではないでしょうか:
■ 教育機関・協会への提案
- ヒューマンスキルを学ぶ時間をカリキュラムに組み込むこと
例:敬語やマナー、報連相、職場内のトラブル対処法など - 「認定講師」や「資格者」への研修内容にも人間性評価の要素を加えること
単なる技術力だけでなく、教える側としての人格が問われる仕組みづくり
■ サロン運営者としてできること
- 技術評価だけでなく、「人柄・気配り・協調性」を採用基準に加える
- 定期的に「心理的安全性」や「職場の空気」についてスタッフと対話の機会を持つ
- 肩書きや年数にとらわれず、対等な人間関係を意識した環境づくり

■ 現場のネイリストたちへ
「資格がないからダメ」「講師じゃないから発言権がない」
そんな思い込みに縛られず、人としての誠実さや思いやりを大切にしてほしいと思います。
それはきっと、お客様にも、仲間にも、そして未来の自分自身にも返ってくるからです。
ネイルは、ただの“作業”ではありません。
お客様と心を通わせる“人と人との仕事”です。
そして、人との関係を大切にできるネイリストこそが、長く愛され、選ばれる存在になっていくのだと思います。
ネイル業界の未来が、もっと温かく、健やかなものになるように。
いま、教育や制度の在り方を見直すことが、私たち全員に求められているのではないでしょうか。