P1 はじめてのサロン勤務で、最初にぶつかった壁
ネイルスクールを卒業して、念願だったネイリストとしての一歩を踏み出したばかりの頃。技術的な不安はもちろんありましたが、それ以上に戸惑ったのは、お客様とのコミュニケーションの取り方でした。
初めてご来店いただいたお客様に対して、どんなテンポで話すのが心地よいのか、希望するネイルをどう汲み取ればいいのか。とくに、画像を見せてくださるお客様の場合、「このデザインのどこに惹かれたのか」「色味なのか、質感なのか、全体の雰囲気なのか」まで、丁寧にすり合わせることの大切さを、日々の施術の中で学んでいきました。
正直、ネイリストとしての経験が浅い時期は、自分にできるかどうかで頭がいっぱいになる瞬間もあります。でも、お客様と一緒に考え、会話を通じて理解を深めることで、技術以上に信頼が生まれることを少しずつ実感していきました。
この時期、転職や中途採用で途中からサロンに加わったスタッフとも関わる中で、それぞれの不安や挑戦の形が違うことにも気づかされました。新卒でも中途でも、「キャリアのスタート」はいつだって手探り。でも、だからこそ支え合える関係性が生まれるのだと思います。
福岡のように多くのサロンがある地域では、選択肢が多いぶん、自分に合ったサロンを見つけるのも難しいものです。私はまず、サロンの空気や先輩たちの雰囲気から学ぶことを意識しました。与えられた役割だけでなく、周りの様子を見ながら、自然とできることを探す。それが、新人時代の自分にできる最大限のキャリアアップだったように思います。
P2 技術とスピード、どちらも大切だからこそ悩んだ時期
サロン勤務にも少しずつ慣れてきた頃、次に大きく壁を感じたのは「施術スピード」でした。
スクールではじっくり時間をかけて仕上げていたネイル。でも実際のサロンでは、お客様一人ひとりにかけられる時間が決まっています。技術を丁寧に提供したい気持ちと、サロン全体の流れに合わせなければというプレッシャー。その間で、思うように仕上がらない日が続いた時期がありました。
焦れば焦るほど手元が乱れ、お客様にも不安が伝わってしまう。そんな日々が続く中で、先輩ネイリストに言われたひとことが印象に残っています。
「慣れるまで焦らなくていい。でも、常に一歩でも早くなるにはどうしたらいいかを考えて動くことが大事だよ」
その言葉をきっかけに、施術中の手の動かし方や無駄のない準備の仕方など、ひとつひとつを見直しました。また、福岡市内で開催される講習会に積極的に参加して、効率的な施術技術や道具の使い方を学ぶようにもなりました。
中途採用で入ったネイリストの中には、スピードと技術のバランスをすでに身につけている人もいて、刺激を受けることも多かったです。でも、比べるよりも「今の自分に何ができるか」を軸に考えるようになってから、自然とお客様からのリピートも増え、自信もついていきました。
キャリアアップというと、何か新しい資格を取ったり、役職につくことを想像しがちですが、自分の中にある「できること」を少しずつ増やしていくことも立派な成長だと感じました。
このあとご紹介するのは、周りとの関わりの中で学んだ「チームとしての働き方」についてです。ひとりではなく、誰かと一緒に働くからこそ見えてきたことがたくさんありました。
参考記事:成長を応援する福岡アンドネイルの職場環境
P3 自分のためではなく、チームのために動くという意識
ある日、施術の合間にふと周囲を見渡したとき、先輩ネイリストが目配せひとつで後輩に指示を出し、流れるようにサロン全体が回っているのを目の当たりにしました。その空気に、自分はまだ完全には溶け込めていないと気づいた瞬間でした。
それまでは、自分の担当のお客様のことだけで頭がいっぱいでした。でも、経験を積むほどに「サロン全体の流れを読んで動くこと」や「先輩が忙しいときにどんなフォローができるか」が自然と求められてくるのだと実感しました。
たとえば、誰かの施術が長引いているときに次のお客様を席までご案内する、使った道具をサッと片づけておく、空いた時間に備品の補充をしておく。小さなことの積み重ねですが、それが結果的にお客様の満足度にもつながり、働く環境も整っていくことを学びました。
こうした気配りは、技術とはまた違った「見えにくいスキル」かもしれません。でも、キャリアアップして後輩を指導する立場になったとき、こういう動き方ができる人材の大切さを実感するのだろうなと、思うようになりました。
福岡のようにスタッフの入れ替わりも多いエリアでは、新卒と経験者、中途採用のスタッフが一緒に働く機会が多くなります。それぞれの経験ややり方が違うからこそ、チームとして機能するには「お互いを尊重する姿勢」と「空気を読む力」が必要不可欠です。
新人時代は、気づいたことをすぐに言葉にするのが怖かったり、何が正解か分からず黙ってしまうこともありました。でも今は、「言葉にする勇気」と「遠慮せず助ける姿勢」が、スタッフ同士の信頼関係を築くうえでとても大切だと感じています。
P4 少しずつ増えていくできることと、自分の中の変化
ある日、ふと気づいたことがありました。いつの間にか、自分が後輩に質問される側になっていたことです。
ほんの少し前までは、毎日のように先輩に「これで合ってますか?」と確認していた私が、今では「このデザインどうやって作ってますか?」と聞かれるようになっている。はじめてそれに気づいたとき、なんだか不思議な気持ちになりました。
とはいえ、何か特別なことをしてきたわけではありません。ひとつひとつの施術に向き合って、少しでもお客様に満足してもらえるように努力を続けてきただけです。でもその積み重ねが、気づけば「経験」と呼ばれるものになっていて、後輩の不安やつまずきにも共感できるようになっていました。
ある新卒の子が「お客様とうまく話せない」と悩んでいたとき、自分も同じことで悩んでいたことを思い出しました。そのとき、「うまく話そうとしなくても大丈夫。まずは、お客様のことを知ろうとする姿勢が伝われば、それだけで十分だから」と声をかけました。
そんなふうに、少しずつ自分の経験を誰かの役に立てるようになったとき、「ネイリストとしてのキャリア」が次の段階に進んだような感覚がありました。
福岡のサロンはとくに、新卒からスタートしても早い段階で責任ある仕事を任されることが多いと感じます。だからこそ、自分のできることが増えるたびに、周りの人の働き方や考え方にも目が向くようになっていく。ネイルのスキルだけではなく、人との関わり方にも成長を感じる瞬間が増えていきます。
参考記事:ネイリストの成長は職場で決まる|長く続くお店と未熟な環境の違いとは

P5 キャリアを積むということは、自分の価値観を見つけていくこと
ネイリストとして働き始めた頃は、技術を磨くことばかりに集中していました。でも、ある程度できることが増えてくると、それだけでは足りないと感じるようになりました。
「自分は、どんなネイリストになりたいんだろう」
そんな問いが、だんだんと心の中に生まれてきたのです。
福岡という土地は、美容感度の高いお客様が多く、トレンドに敏感な方もたくさんいらっしゃいます。その一方で、長く通ってくださるお客様の中には、流行よりも安心感や自分らしさを大切にしている方も少なくありません。そうしたさまざまなお客様と接する中で、「目の前の方にとって心地よいネイルってなんだろう?」と考える時間が増えました。
ネイルは、形や色が整っているだけでは不十分です。その人の雰囲気や日常に自然になじむデザインであったり、仕上がったときに「嬉しい」と思ってもらえる体験こそが、大切だと気づきました。
転職や中途採用で入ってくるネイリストと話す機会があると、それぞれが大切にしてきた価値観に触れることもあります。どんな道を歩んできても、「お客様のために」という気持ちは皆共通していて、そこに経験者としての重みや視点が加わると、自分にはなかった気づきが得られることも多いです。
キャリアアップというのは、単にランクが上がることや役割が増えることではないと思います。自分の中に「譲れない想い」が生まれ、それをお客様やチームの中で少しずつ表現できるようになっていくこと。そうして、周囲からも信頼される存在になっていくことこそ、本当の意味での積み重ねではないでしょうか。
この仕事を通して出会う人、感じること、学ぶことのすべてが、ネイリストとしての自分をつくっていきます。焦ることも、迷うこともたくさんありましたが、今ではそれもすべて大切な経験だったと心から思えます。

